n22


大晦日の朝がやってきた。もの凄い吹雪でゴンドラは動かないみたい。

それでもリフトが始動すれば、スキーに行こう。とにかく久々のスキーなので、あの
広大なニセコユナイテッド全山共通券じゃなくてもよろしい。

とりあえず、4つのスキー場のうちのひとつ、ニセコビレッジ(旧東山スキー場)の
フリーパスをアンビで二千五百円で購入した。破格だと思う。

ワゴンで、ヒルトンホテルまで送ってもらった。この時期、アンビに滞在しておられる
お客さんは常連なのは当然だが、スキー・スノボの名手揃いだ。ヘルメットを標準
装備しておられる方も多い。

なんだか緊張するが、もう後戻りはできない。

ビレッジ到着。暴風雪で下の方のリフトしか動いてないそうだ。とにかくリフトに
乗って初心者コースを二回ぐらい足慣らしして、さらに上に向かった。

風が強くて、視界がゼロで、なにより氷点下10℃以下でシバレル。

全然楽しくないぞと思いながら、幾度となく転倒を繰り返す。もう、我武者羅に滑って
いたゲレンデの特急野郎も見る影もなくビクビクとターンする弱い動物のようだ。

それにこの運動量の凄さは、たいへんなエネルギーを要した。

ここらで、よい加減にランチにしようとヒルトンホテルに戻った。

もう、体は完全に凍っている。コチコチな動きで階段を昇った。

ホテル2階の某レストランで昼食をとろうとすると、滅茶苦茶混んでいた。

すると、とてもスキーに来ているとは思われない服装の優雅なレディがカクテルを
傾けている席がござった。

ウイスキーがお好きでしょう♪

まったく下心などございませぬが、

『申しわけございませんが、相席をしてもよろしいですか?』

と問いかけると、どうぞとコワク的な微笑みを見せるお若い婦人よりエレガントな
応答がありました。なんだかドキドキするなあ。ぞんがい彼女はフレンドリーだし。

n19


オーダーしたのは一番安かった味噌ラーメンなんですけど、完全にインスタントでした。

酷いぼったくりだった。これで、1680円はねえべさあ。おごれる平家久しからず。

一応、画像を撮影していると、

「よろしかったら、写真を撮りますか」

お嬢さんから申し出がござった。いや、サッポロ一番と記念写真を撮ってもいたし
かたないので丁重にお断りした次第である。

食後、お嬢に相席の御礼を述べ、風雪のスキー場へとふたたび立ち向かっていく。

だってフリーのチケットがもったいないもの。

その後ものたうちまわりながら、ヘタクソなスキーを繰り返す北のサムライであった。

そして、猛吹雪もピークに達していた午後の遅い時間、とあるリフト降り場で熱くて
甘いドラマが誕生する。

もう、豪雪で視界も定かではない。

「すいません、迷ってしまって、どこをどう降りてよいのかわからないのです。初心者
 ですし」

帽子やゴーグル・ネックガードで、イマイチ年齢がつかめなかったのですが、上品
そうなご婦人から声をかけられた。かなり怯えている様子である。

ニセコのスキー場って、たぶん日本一、いや世界一ぐらい広大なゲレンデだと思う。

実は筆者もこの超暴風雪で位置感覚がまったくつかめておらず、本当は非常に
不安だった。

『ようがんしょ。てえした野郎じゃございませんが、ご一緒にヒルトンまで降りましょう』

というわけで、迷子のご婦人と一緒に変な名前のコース(ミソシルとかザンギとか)を
恐る恐る下降していく。傾斜がきつくかなりリスキーで人気がない。おまけにホワイト
アウト。長いし。

n21


かなり時間をかけてようやくヒルトン前に辿りついた。

「ありがとうございました。本当にこのご恩は忘れません」

彼女の眼は少し涙ぐんでいた。

そして、感動的なラブに・・・

発展せず。

これ以上、なにもございません。

「よく、こんな悪天候で今まで滑っていたね、もう、みんな宿に戻っているよ」

と、宿のワゴンで迎えに来た村長さんがにこにこしながら呟いていた。

どうやら、宿にTELさえすれば迎えに来てもらえたらしい。またニセコのスキー場間
を循環するシャトルバスが常時走っており、必ずミルク工房で停車する。つまり
自力でアンビに戻る手段もあったのだ。

結局、約束の16時まできっちりと滑っていたのは、川崎のボーダーフジタ氏と
へっぽこスキーヤーのゴロウさんだけでした。