結局、上級生たちはヨタノと乱取りをして怪我をしたくないという理由だけで、
新入部員の教育係に厄介払いしたようだ。
普通、この役目はレギュラーから外れた戦力外の部員にさせるべきことだ。
よっぽどヨタノに壊されるのが嫌だったらしい。
武道というものは、競い合ってこそ上達するもんなので、ヨタノとしては
おもしろくなかった。
とにかくまあ、新入部員7人を一列に並ばせた。
『貴様らの自己紹介をしろ』
ヨタノは大声を張り上げた。
体重40キロ台のやつは、
「マツイです。強い男になりたいのでよろしくお願いします」
ヨタノの顔を見ている。
『バカモノ。俺の目を見るな』
ヨタノに一喝されるとかなり狼狽していた。
『おまえは体重のわりに背が高いな。以後、ヒョロマツだ』
「はい」
『はいではない。押忍といえ』
「オス」
『声が小さい』
「押忍!」
中学時代イジメに遭っていたというサガラは、猿顔だった。
以後、”サル”
喘息もちのスドウは、異様に胴が長いので”ズンドウ”
泳げないイシイは、そのまま”カナヅチ”
霊感体質のヤブキは”ブキミ”
マザコンのオヌキは、狸顔なんで”タヌキ”
ウォークマンを聴いていた生意気なタナカは、キツネ目の三白眼だった。
したがって、コードネーム”キツネ”だ。
以上7名が鬼より怖いヨタノの傘下となった。
『これより筋力トレーニングを行う。腕立伏せ50回』
「えー、そんなに」
『誰だ?今いったやつは?7人いるから腕立50回の7セット。腹筋も背筋も
全部7セットだ』
いち、にい、さん・・・
中には、腕立て10回程度で音を上げているやつがいる。
そんな連中には剣道部で廃棄処分になった竹刀が容赦なく背中に叩き込まれ
た。
次に裏山ダッシュだ。部室の裏山を全力で駆け登る荒行である。登り切ると
校舎を見渡せる丘があった。小説タンデムにも登場した実在の丘だ。
『いいか。この山はマムシの巣窟である。ちんたら登っているとマムシに噛ま
れるぞ。過去に先輩2名が噛まれて救急車で搬送された。噛まれたくなかっ
たら全力で走れ。ただし、両手に10キロのダンベルを抱えてな』
新入部員は健気に駆け登る。中学時代は運動部にいたやつもいるのだが、
皆、バテまくって歩き出していた。
『馬鹿野郎。歩くとマムシに噛まれるぞ』
とにかく、この”嘆きの坂”は、経験だけがものをいう。上級生たちは、数限
りなく走りこんでいるから、さして苦痛だとは思わなくなっているのだ。
ヒョロマツやタヌキは頂上の丘でゲロを吐いていた。他の連中は全員、倒れな
がら苦しい息で悶えていた。
「ヨ、ヨタノ先輩、なんで、こんな凄い坂を息もあげないで登れるのですか?」
キツネが質問してきた。
『おまえは見所のあるやつだと思っていた。いい質問だ』
全員がヨタノの顔を注目する。
『明日から”俺は男だ”と連呼しながら坂を登れ!そうすれば、将来のどんな
困難でも乗り切れるぞ』
翌日から、嘆きの坂では”俺は男だ”という声が激しくこだましていたと
いう。
なんて可愛い後輩ばかりなのだろうと鬼より怖い硬派ヨタノは不気味に微笑
んでいたそうな。
新入部員の教育係に厄介払いしたようだ。
普通、この役目はレギュラーから外れた戦力外の部員にさせるべきことだ。
よっぽどヨタノに壊されるのが嫌だったらしい。
武道というものは、競い合ってこそ上達するもんなので、ヨタノとしては
おもしろくなかった。
とにかくまあ、新入部員7人を一列に並ばせた。
『貴様らの自己紹介をしろ』
ヨタノは大声を張り上げた。
体重40キロ台のやつは、
「マツイです。強い男になりたいのでよろしくお願いします」
ヨタノの顔を見ている。
『バカモノ。俺の目を見るな』
ヨタノに一喝されるとかなり狼狽していた。
『おまえは体重のわりに背が高いな。以後、ヒョロマツだ』
「はい」
『はいではない。押忍といえ』
「オス」
『声が小さい』
「押忍!」
中学時代イジメに遭っていたというサガラは、猿顔だった。
以後、”サル”
喘息もちのスドウは、異様に胴が長いので”ズンドウ”
泳げないイシイは、そのまま”カナヅチ”
霊感体質のヤブキは”ブキミ”
マザコンのオヌキは、狸顔なんで”タヌキ”
ウォークマンを聴いていた生意気なタナカは、キツネ目の三白眼だった。
したがって、コードネーム”キツネ”だ。
以上7名が鬼より怖いヨタノの傘下となった。
『これより筋力トレーニングを行う。腕立伏せ50回』
「えー、そんなに」
『誰だ?今いったやつは?7人いるから腕立50回の7セット。腹筋も背筋も
全部7セットだ』
いち、にい、さん・・・
中には、腕立て10回程度で音を上げているやつがいる。
そんな連中には剣道部で廃棄処分になった竹刀が容赦なく背中に叩き込まれ
た。
次に裏山ダッシュだ。部室の裏山を全力で駆け登る荒行である。登り切ると
校舎を見渡せる丘があった。小説タンデムにも登場した実在の丘だ。
『いいか。この山はマムシの巣窟である。ちんたら登っているとマムシに噛ま
れるぞ。過去に先輩2名が噛まれて救急車で搬送された。噛まれたくなかっ
たら全力で走れ。ただし、両手に10キロのダンベルを抱えてな』
新入部員は健気に駆け登る。中学時代は運動部にいたやつもいるのだが、
皆、バテまくって歩き出していた。
『馬鹿野郎。歩くとマムシに噛まれるぞ』
とにかく、この”嘆きの坂”は、経験だけがものをいう。上級生たちは、数限
りなく走りこんでいるから、さして苦痛だとは思わなくなっているのだ。
ヒョロマツやタヌキは頂上の丘でゲロを吐いていた。他の連中は全員、倒れな
がら苦しい息で悶えていた。
「ヨ、ヨタノ先輩、なんで、こんな凄い坂を息もあげないで登れるのですか?」
キツネが質問してきた。
『おまえは見所のあるやつだと思っていた。いい質問だ』
全員がヨタノの顔を注目する。
『明日から”俺は男だ”と連呼しながら坂を登れ!そうすれば、将来のどんな
困難でも乗り切れるぞ』
翌日から、嘆きの坂では”俺は男だ”という声が激しくこだましていたと
いう。
なんて可愛い後輩ばかりなのだろうと鬼より怖い硬派ヨタノは不気味に微笑
んでいたそうな。
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